ダイバーシティ推進の要とも言われている女性活躍推進。女性が自身の強みを十分に発揮して活躍するために、企業はどのような支援をしていくことが望ましいのでしょうか。2021年10月に株式会社オーファンパシフィックの代表取締役社長に就任した原 愛(はら めぐみ)さんに、シミックグループの大石COOが話をお伺いしました。

大石原さんは2015年9月に入社されました。なぜオーファンパシフィックに?

大学卒業後、病院薬剤師として働いていましたが、現状の薬では救えない患者さんがいることを実感し、製薬会社に転職しました。前職では、新製品プロジェクト、学術、アライアンスとさまざまな役割を経験させてもらいましたが、患者数が多い慢性疾患の治療薬を扱うことが多く、代替薬もあり、その薬がないと命に関わるということはあまりありませんでした。患者さんの人生や生活を変える薬を扱いたいという思いが次第に強くなり、オーファンドラッグ※に興味を持ったのがきっかけです。

大石数ある製薬会社からオーファンパシフィックを選んだ決め手は?

ビジネスモデルが他社と違って面白いと思いました。主に自社で開発した薬剤を臨床開発~販売までもっていく通常の製薬会社と異なり、オーファンパシフィックなら、フレキシブルな方法で必要とされる薬をいち早く患者さんに届けることが可能です。小規模な会社だからこそ、やれることも多いと感じました。

大石入社7年目、40 代での社長就任となりましたが、打診を受けたときはいかがでしたか。

圭子さんからお電話をいただいたときですね。予想しておらず、とても驚きました。とはいえ「少し考えさせてください」ということでもないでしょうし、やらないで後悔するぐらいならやってみようという気持ちで引き受けさせていただきました。ただ、その後1週間くらいはよく眠れませんでした(笑)。

大石新しいことにチャレンジするときに不安や悩みがゼロということはないですからね。

代替薬がないオーファンドラッグは、患者さんの命を支える重責も伴いますので、企業の責任を強く感じています。安定供給のためには、リスクを事前に特定し、万全な対策を立てておくことが必須です。とはいえ、社長就任のお話をいただいたときはリスクの心配よりも、自分でこの会社の将来を良い方向に導いていけるかもしれない可能性にワクワクしました。

大石社会的な責任が大きい分、やりがいも大きいと思います。仕事をしていくうえでのターニングポイントは?

入社2 年目での役員就任時でしょうか。自分ではまだ無理かもと思ったのですが、就任を打診していただいた前社長に理由を伺ったら、「役員会にサイエンスを持ち込みたい」、そして「ダイバーシティ。自分が外国人、あなたが女性・若手枠」と言われました。それなら自分がやってきたことの延長でできるかもしれないと思い引き受けました。

大石良い口説き文句ですね(笑)。その後社長就任までに気持ちの変化や転換期はありましたか。

前社長から「後継者を育てたい。あなたはその候補者の一人だ」と言われたことは心のどこかに残っていました。将来そういう日が来たとき、会社にとって一番良い選択を提供できるようにしておきたいと思い、経営やビジネスに必要な知識やスキルを得るための勉強にも取り組むようになりました。

大石サイエンスのスペシャリストであった原さんが、会社経営に携わることで、キャリア意識に変化があったのですね。

正直、当初はマネジメントに全く興味はありませんでした(笑)。ただ、さまざまな局面で自分のやりたいこと、求めていることを自分に問いかけてきました。それで決断を迫られたときに、自分の気持ちに沿った選択ができたと思います。

大石何かのきっかけさえあれば、力がある人はこうやって変わる可能性があるという良い例ですね。会社はキャリアアップを目指す社員が増える環境を整え、個人の成長に合わせたチャンスを提供していくことが必要ですね。最後に、今後の目標を教えてください。

私たちの会社の原点になりますが、一人でも多くの患者さんにオーファンドラッグを届けることに注力していきたいと思います。治療手段がまだない希少疾病も多い一方、開発中のオーファンドラッグも数多くあります。その中で何をやっていくのか、自分たちだからこそできることは何かを考え続けて会社を成長させ、そこで得た収益を次の薬の開発に回す、という好循環を生み出せるようにできればと考えています。