医薬品開発の分野では製薬企業社員が大学などのアカデミアへ出向するといった形で共同研究を行うことが以前から盛んに行われてきました。こうした場合、雇用契約は一方とだけ結び、もう一方は非常勤となるケースが多かったため、医療保険・年金や退職金などの面で研究者に不利益が生じていました。

このため、優れた研究開発人材が産学の垣根を越え、複数の組織で活躍しやすくなる仕組みが求められおり、2014年に文部科学省、経済産業省から発表されたのが「クロスアポイントメント制度」です。

シミックでは、山梨大学、株式会社はくばくとともに、地域のダイバーシティ環境の牽引を目指した「Yamanashi Network for Diversity & Innovation」を進めており、その一環として、クロスアポイントメント制度を活用して、シミックグループの社員が山梨大学で活躍しています。
シミックの枠を飛び出して山梨大学でも活躍中の真島 奈都美さんと菊池 桜さんにお話を伺いました。

クロスアポイント制度とは

研究者等が、複数の大学や公的研究機関、民間企業との間で、雇用契約を結び、活動を行うことを可能とする制度です。本制度の活用により、研究者等が組織の壁を越えて活躍でき、研究キャリアの幅を広げることが期待できます。
大学では企業経験を活かした教育の提供や、若手研究者の視野を広げるなどのメリットがあり、企業にとっても、新規技術や知見の獲得、共同研究の推進や、産学事業の人的交流となるなどの多くのメリットが期待できます。本制度の下では、研究者等は2つの機関(例えば大学と民間企業)と雇用契約を結び、それぞれの身分を持ちます。また、給与は、あらかじめ設定した仕事時間の配分率に基づき、両者から支給されます。


真島 奈都美さん

■シミック株式会社臨床事業第三本部 入社4年
■山梨大学地域人材養成センター
就業スタイル: 月~木曜日 シミック/金曜日 山梨大学 ※リモートワークも活用

本制度利用のきっかけ

実は私は、自分から今回の制度に自ら進んで手を上げたというわけではなく、上司から打診を受けて「やります」と、中身もよく聞かずに即答しました。新しいプロジェクトにチャレンジするのが普通の環境だったので、全く抵抗はなかったですね。

山梨大学での仕事

シミックでの業務と一番違いを感じるのは、自分自身でどんな仕事をするのかを考えなければいけないというところです。今まではCROという仕事柄、治験計画書に基づき、任された仕事をきちんとこなすことが第一でした。一方、大学での仕事では課題設定から自分でやらなければなりません。今後はもっと主体的に動いていきたいと思っています。また、研究者としての側面や、母親業もこなすプライベートでの顔、学生さんへ本格的な基礎研究を指導されている姿など、通常のシミック業務では伺うことのできなかった先生方の側面を知ることができ、大変ポジティブな刺激をいただいています。

今後、やってみたいこと

今、最も興味があるのは、臨床研究に関して先生たちが抱えているお困りごとのサポートです。自分自身のリサーチクエスチョンを追求するために臨床研究を行いたいけれど、倫理審査などさまざまな壁に阻まれて、実施まで至らないという先生は少なくはありません。私自身のこれまでの経験や、シミックのさまざまなシステムやノウハウを先生方のお役に立てられる方法を考えたいと思っています。


菊池 桜さん 

■シミック株式会社 臨床事業第三本部 1部 入社5年
■山梨大学地域人材養成センター
就業スタイル: 月~木曜日 シミック/金曜日 山梨大学 ※リモートワークも活用

本制度利用のきっかけ

シミックでは主に臨床研究のモニタリングや治験の研究事務局を担ってきたのですが、受託業務を続けていくことだけで終わりたくはないという気持ちがあり、今回の制度に応募しました。

山梨大学での仕事

大学の業務とシミックの業務は、全く違います。大学では業務の限界や範囲が定められていないので、何をするにも自分次第で、責任も自分にあります。最初は週1日の就業ということもあり、自分自身で制限をかけていたところもありましたが、ようやくペースを掴んできたと感じています。

今後、やってみたいこと

今一番関心があるのは、学生と企業をつなぐ活動です。社会人メンターの導入や共同フィールドワークなどで企業の考え方を早くから体験することは就職活動予定の学生にとって有益なのはもちろん、民間企業の視点を持って研究に臨むことはアカデミアに残る学生にとっても重要なことだと思います。一方、民間企業も地域に根差したCSR 活動や新卒採用に有益と考えています。本プロジェクト終了後も運用できるようなシステムづくり につなげられるような研究ができればと思っています。



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