シミックグループの企業カルチャー「W&3C 」の4つのワードからテーマをひとつ選んでいただき、そのテーマについてお話しいただくコーナーです。今回は、アートプロデューサーでギャラリストの高岩シュンさんに、「Challenge」についてお話しいただきました。

 京都の祇園でCANDYBAR Gallery というギャラリーを運営しながら、展覧会やアートフェアのプロデュース、テレビドラマのアートディレクションなどをしています。しかし、最初からアートを生業にしてきたわけではなく、20代後半のときに大学院の教室メンバーとAIを用いた人口動態の将来推計システムを利用した医療系シンクタンクを立ち上げました。その運用をしていく中で、人間らしく生きる価値を考えるようになり、「どう生きるか」という哲学を追求できる芸術や文化、アートにたどり着きました。

アートとの出会いは今から約20年前。初めてKAWSと出会い、そのエネルギッシュでエモーショナルな作品に圧倒されました。今まで慣れ親しんでいた風景画や肖像画のような、いわゆる近代絵画とは全く異なる作風で、自分の中で固定されていたアートへの概念が取り払われたような感覚がありました。このKAWSに代表されるストリートアートやカルチャーとの出会いがコレクションの原動力になり、今でも起点になっています。

※ KAWS(カウズ):米国、ニュージャージー出身のアーティスト。最も有名なのが目が×印になったキャラクター。

アートに携わる仕事を本格的に始めたのは6年ほど前から。拠点を京都に構え、2017年秋には清水寺で夜の特別拝観にあわせて、重要文化財である経堂でフランスのメディアアートアーティストNONOTAKの奉納パフォーマンスをプロデュースしました。昔から寺院はアーティストのパトロンであり、美術品を収蔵、発表する場でもありました。仏師や絵師は当時最先端のコンテンポラリーアーティストであったとも言え、現代のコンテンポラリーアートを寺院で表現すれば、必ず共鳴すると確信していました。実際、古い寺院と現代アートの対比は非常に良いシナジーをもたらし、鑑賞者やアーティストに素晴らしいエネルギーを産んでくれました。

こうした活動の根底にはアーティストや表現者に対するリスペクトがあり、彼らをサポートしたいという気持ちが原動力になっています。アートを事業化して、ビジネスとして回していけるプラットフォームを作ることができれば、アーティストにも還元できると思っています。2021年にはアーティストが世界に羽ばたいていくためのプラットフォームであるARTISTS' FAIR KYOTO のプロデューサーを拝任し、アーティストと社会、そして世界を繋げる活動を行っています。

ARTISTS' FAIR KYOTO 2021 京都文化博物館会場写真

 最近「アートとお金」の話がよく話題にのぼります。もちろんアートには必ずお金がまとわりますし、投資し儲けたいというモチベーションも大事でしょう。しかし、僕は「そこに到達したときに自分はどうなりたいのか」ということの方がもっと大切なのではないかと考えるようになりました。事業性の確保はもちろん必要ですが、数字の部分だけでなく、その事業をやることで関わった人たちに、どのような影響を与えることができるかということを大切に活動したいと思っています。

人を想い自分が生きていくために大切なもの。今の僕にとって、チャレンジを行い続けたどり着いた現在、それが「アート」になります。自分のビジョンや夢を明確にし、精一杯人の気持ちに応え、人を思いやり、人を助け、信頼関係を築いていくことを信念に「自分はこう生きていくんだ」というものを見つけることができれば、その後の人生はより豊かになるのではないでしょうか。

CANDYBAR Gallery 木村彩子展写真CANDYBAR Gallery 木村彩子展





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