今回は、日本と海外との文化やマナーの違いについて、私が長年住んだ北米を例に解説していきます。

日常生活 編

1.食べ物のシェア(Food sharing)

北米では、日本のように食べ物をシェアする習慣はあまり見られません。レストランでアペタイザー(前菜)をシェアすることはあっても、メインディッシュは基本的に一人一品を注文し、自分が頼んだ料理を食べます。大皿で提供される場合は、トングや取り分け用のフォークやスプーンを使ってそれぞれの小皿に取り分けます。アイスクリームを味見する場合も、使っていないスプーンで一口だけもらい、二度目はありません(串カツの二度漬け禁止ルールに似ています)。焼肉などに誘うと、バーベキューが得意な外国人男性がトングで肉を焼いてそれぞれの皿に取り分けてくれますが、日本人は自分の箸で他人の料理を取り分けることが多いので、注意が必要です。鍋料理をつつくときも、直箸はNGです。

2.洗濯(Laundry)

北米では、広い庭がある家が多いにもかかわらず、洗濯物を外に干すことはほとんどありません。景観を守るため、契約やルールで外干しが禁止されていることが一般的です。アメリカにはHOA(Homeowners association/管理組合)という組織があり、住民のために共用施設を管理しています。HOAの目的は住みやすい住環境作りと不動産の資産価値を保全することです。アメリカでは「洗濯物の外干し」イコール「貧困」というイメージが一般に広く強く根付いているため、洗濯物を外に干すと不動産価値が下がると考えられており、洗濯物の外干しを禁止するHOAが多いです。また、日本と違いスペースの制約がないため、洗濯機(washer)と乾燥機 (dryer)は一体型ではなく、パワフルかつ大容量の乾燥機が設置されています。

仕事 編

1.宗教、健康、好みなど様々な理由による食事のニーズや制限
(Dietary considerations and restrictions for various reasons(religion, health, and preference))

グローバルな環境で食事の手配をする際、ベジタリアンとヴィーガン(卵や乳製品を含む、動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者」)がよく知られていますが、他にもアレルギー、gluten intolerance(グルテン不耐症)、Kosher(ユダヤ教の食事制限)、Halal(イスラム教の食事制限)、Low carb diet(糖質制限食)などがあります。北米ではデリバリーのメニューに原材料やアレルゲンなどの表示がありますが、日本ではまだまだ少ないため、注意が必要です。また、糖尿病など健康上の理由だけでなく、ダイエット目的で糖質制限食を好むビジターもいるため、フードロス削減の観点からもスペシャルニーズや好みを事前に把握しておくとよいでしょう。

2.上司や目上の人の呼び方

日本人にとっては抵抗がありますが、北米では上司や取引先の人をファーストネームで呼ぶことが一般的です。これは、互いの距離を縮め、スムーズな人間関係を構築するためです。相手への敬意を示すために、初対面の時は「Nice to meet you, Mr. Smith. I am Taro Yamada.(はじめまして、スミスさん。私は山田太郎と申します)」と挨拶をします。その場で“Please call me George. (ジョージと呼んでください)”のように言われたら、その後はその呼び方で呼べばOKです。また、目上の人でも、本人からファーストネームで呼んでほしいと言われたら、それに従いましょう。Joanne(ジョアン)という名前の人がJo(ジョー)、Jennifer(ジェニファー)という名前の人がJenny(ジェニー)、Anthonyという名前の人がTonyと呼んでほしいなど、本人が気に入っている呼び名があります。その場合は、”I go by Tony.”や”Call me Tony.”と言われますので、その呼び方を使います。

日本と海外の文化やマナーの違いは、驚きや発見の連続ですが、それぞれの背景や価値観を知ることで、相手への理解や配慮が自然と深まります。
特にグローバルな環境では、違いを楽しみつつ、自分の行動にも気を配ることで、より良いコミュニケーションや関係構築が可能になると感じています。
このコラムが、異文化理解や日常生活での新しい視点を得るきっかけになれば幸いです。


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