俳優界の名門 田村家を背負い、未来につないでいく覚悟
特別対談 田村 幸士 × 中村 和男
日本の医療業界は、近年「ドラッグラグ」・「ドラッグロス」という課題に直面しています。 ドラッグラグとは、新薬が海外で承認されてから国内で承認されるまでの遅れを指し、患者が最先端の治療を受けるのが遅れる原因となります。 一方、ドラッグロスは国内で必要とされる薬剤が国内で開発されない状況を指します。これらの課題は、患者にとって治療機会の損失をもたらし、医療水準の低下を招くため、国家的な対応が求められています。
※欧米で承認されていて、日本で未承認の医薬品
この問題の背景には、国内外の市場特性や規制の違い、治験体制の効率化の遅れなど、さまざまな要因が絡んでいます。特に、海外の企業が日本市場の複雑な規制要件を十分に理解で きず、新薬の開発を見送るケースも見られます。また、日本市場の規模や収益性が十分な魅力を持たないと判断されることも、企業の参入を阻む要因の一つです。これらに対応するため、日 本政府・関連機関はさまざまな取り組みを進めています。
厚生労働省は創薬力の強化と医薬品の安定供給を目指し、薬事規制の改善を推進しています。2023年には専門家会議を設立し「迅速かつ安定的な医薬品供給の実現に向けた包括的な対策」を進める方針を示しました。この報告では、規制プロセ スの迅速化と国際調和が強調され、特に「日本人を対象とする第I相試験をMRCT(多地域臨床試験)前に行う義務の緩和」などが含まれています。また、2024年9月からは新薬申請時の英語による文書提出が試験的に認められ、海外企業の参入がよ りスムーズになっています。
PMDAは審査期間の短縮に取り組み、2023年には標準審査で332日、迅速審査で257日を達成しました。さらに、2024年には小児薬と希少疾病薬に対応するための「小児・希少疾病薬規制相談センター」を設立。バイオシミラー製品に関しても、 日本のデータを必要としない条件で受け入れる方向性を示し、国際的な治験参加を容易にしました。相談体制を強化し、企業がより効果的に参入できる環境を整備しました。
AMEDは、創薬ベンチャーエコシステムの強化を推進しており、2022年には創薬に特化したハンズオンによる事業サポートを行うベンチャーキャピタル(認定VC)を認定しました。さら に、認定VCが総費用の3分の1以上を投資するプロジェクトに対してAMEDが補助金を提供するプログラムを実施することにより新薬開発を促進しています。
日本は特許医薬品および新分子化合物(NMEs)の市場規模で世界第3位を誇り、世界最先端の医療と医療の専門家へのアクセスのしやすさ、医療に対する国民の高い理解は、革新的な 治療法を提供する場として高いポテンシャルを持っています。医薬品等の開発が国際化している環境において、日本(PMDA)の規制環境は欧米(FDAやEMA(欧州医薬品庁))などと同様の国 際基準です。また、日本の医療制度は国民全体をカバーするユニバーサルヘルスケアシステムを備えており、承認された薬剤は原則として60日以内に薬価標準に収載され保険診療で用いることが可能となるため、市場の予測性とアクセスのしやすさも魅力です。
シミックは、CRO(医薬品開発支援)業務において培った知識と経験を有し、ステークホルダーとの密なネットワークを構築しています。これらを活かし、医薬品等の開発環境に係わる 情報の発信やドラッグラグ・ロス問題に対する解決策を提供しています。規制要件改善の提案や市場性評価のサポート、医療現場のニーズを反映した製品開発提案に注力しています。これ により、企業の参入障壁を取り除き、国内外企業の革新的な医薬品を迅速に日本の患者へ届けることを目指します。
PMDAやMHLWへ、規制要件を見直すべき点を提案し、海外企業が日本の規制を理解しやすい情報発信。
海外企業が日本市場参入時に必要な市場性調査やリスク評価を行い、最適な参入戦略を提案。
医療現場の声を反映した開発提案を行い、実際の医療ニーズに沿った製品開発推進。
ドラッグラグ・ロス問題の解消には、日本市場の開発環境の改善や国際競争力の向上が欠かせません。厚生労働省やPMDAの規制改革やAMEDによる創薬支援など、政府の取り組みが進展しています。これらの取り組みにより、日本は世界の主要国と比べて迅速な承認制度を持つ国へと進化を遂げつつあります。PMDAによる規制環境の改善やAMEDによるベンチャー支援を通じ、シミックは今後も業界をリードするCROのパイオニアとして、迅速かつ効率的な医薬品開発を支援していきます。これまで培った豊富な経験と専門知識を活かし、より良い医療の未来を切り拓いていきます。
長年、医薬品開発の最前線を担ってきたシミック。
だからこそ見える課題、だからこそ生み出せる解決策があります。
日本の医薬品市場で取り組みが進んでいる「ドラッグラグ・ロス」に対し、
私たちはさまざまな立場から新薬を必要とする患者さんに届けるための挑戦を続けています。
藤枝 徹さん シミックホールディングス株式会社
Consulting and Navigation Unit
一般社団法人 日本CRO協会 会長
希少疾患薬のように、より対象疾患数が少ない治療薬などを中心に、患者さんが必要な新薬が日本に届かないドラッグロスが特に問題です。ドラッグロスの解消には、医薬品市場としての日本の魅力向上と治験実施の場としての日本の魅力向上が必要です。CRO協会としては後者に注目し、英語版ホームページで日本をアピールしたり、国内の治験環境を従来の日本特有のものから、グローバルスタンダードに変化させたりする活動を行っています。また、規制緩和を進める国の取り組みに積極的に協力しています。この重要課題に、皆さんと力を合わせて取り組みたいと思います。
中村 健人さん シミックホールディングス株式会社
CEOオフィス
昨年に参加した『Fierce Biotech Summit』や『OCT(Outsourcing in Clinical Trials) Nordics』で、日本の治験環境について紹介し、海外から寄せられた疑問に答えました。特にベンチャー企業は、なるべく早く、コストを抑えてて効率的に開発を進めることを意識しているため、日本は『コストが高い』『手続きが煩雑』という良くないイメージを払拭する必要性を強く感じました。一方で、シミックの迅速な対応や質の高い運営が評価されており、『シミックの良い噂を聞いた』との声も多く耳にしました。こうした信頼を土台に、グローバルバイオベンチャーと協力し、日本の治験市場を活性化させたいです。
篠原 祐樹さん シミック株式会社臨床事業
Oncology第1本部2部 部長
国内治験の観点では、治験開始や患者募集に要する時間が、ドラッグロスの一つの要因だと考えています。例えば、あるバイオベンチャーは、他国と比較して日本は治験開始に時間が掛かるとの理由で早期試験への参加を見送られた事があります。治験への早期参加は、先生方が新薬に慣れる(特徴を理解する)貴重な機会でもあり、ドラッグラグ・ロスは患者さんに利益をもたらす新薬が適切に使われなくなる懸念もあります。CMICでは国内の先生方とも連携し、日本に必要な新薬を早期に導入するための仕組みを整備しています。