シミックファーマサイエンス株式会社の研究員が執筆した核酸医薬品のバイオアナリシスに関する論文が公開されましたので、お知らせいたします。
抗体医薬品に次ぐ次世代のモダリティーとして核酸医薬品が注目されています。核酸医薬品(OT)のバイオアナリシスでは、アルキルアミン類(イオンペア試薬)とフッ素化アルコールを添加したイオンペア逆相液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた分析法(IP-RP-LC-MS)が現在の主流です。しかし、イオンペア試薬やフッ素化アルコールは装置へ残留しやすい、ライフサイクルが短い、高額といった課題があります。これらは分析の信頼性やコストに影響を及ぼし、研究開発の進行を妨げる要因となりえます。
そこで我々は、日本医療研究開発機構の官民共同研究にて国立医薬品食品衛生研究所の孫雨晨先生と共に、イオンペア試薬を使わない逆相クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた分析法(nonIP-RP-LC-MS)の開発を行いました。この新しい手法では、重炭酸アンモニウム(ABC)を使用することで、OTを高感度に分析できることを見出しました。この手法は、天然および化学修飾されたさまざまなOTの分析に適用可能であることが確認されました。特に、生体試料を用いた実験では、0.5 ng/mLという低濃度サンプルの測定が可能であることが確認され、本手法のOTのバイオアナリシスへの適応の可能性が示唆されました。ABCは、従来の手法と比べて装置への残留が少なく、コストも抑えられるため、装置のクリーニング頻度の低減や分析の再現性向上が見込まれ、より持続可能な分析手法として期待できます。今後は本手法を用いてガイドラインに従ったバリデーションデータの取得を予定しており、より広範な応用が期待されます。
今回の我々の研究成果は核酸医薬品の研究開発の一層の進展に寄与できるものと考えています。
著者 | Yoshiharu Hayashi, and Yuchen Sun |
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表題 | Overcoming Challenges in Oligonucleotide Therapeutics Analysis: A Novel Nonion Pair Approach |
雑誌 | Journal of the American Society for Mass Spectrometry September 4, 2024, Volume 35, Issue 9, Pages 2034-2037 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jasms.4c00270 |
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