中村キース・ヘリング美術館では、現在、アメリカを代表するコスチュームデザイナー兼スタイリスト、そしてニューヨーク・アイコンと して知られるパトリシア・フィールドのアートコレクション展「ハウス・オブ・フィールド」を開催しています。フィールドは衣装デザインを担当したTVドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」が1998年に放映以来、全米で一躍話題となり、映画「プラダを着た悪魔」やNETFLIXドラマ「エミリー、パリへ行く」などファッションが主役とされる映画やドラマに現在もなお欠かせない存在となっています。フィールドは「セックス・アンド・ザ・シティ」放送以前から、ファッション業界ではカルチャーの鍵を握る人物として知られていました。

1966年に地元ニューヨークで自身のブティックを構え、そこは奇抜な最先端アイテムを手に入れることのできる場所として位置づけられました。そのブティック「パトリシア・フィールド」は、さまざまなクリエイターの登竜門として文化の発信地ダウンタウンに存在し続けました。フィールドの店に集まった若者たちの中には、まだ無名であったキース・ヘリングやジャン=ミシェル・バスキアもいました。販売スタッフの中にもLGBTQ+アイコンとして知られるアマンダ・ルポールやアンドレ・Jなど、今でも「卒業生」として活躍する人物たちが多々。しかしヘリングやバスキアのように現在では世界的に有名なアーティストとなった者だけでなく、なかにはアーティストやインフルエンサーとしては日の目を見ることのなかった者たちもいました。

そんなフィールドを中心に集まったアーティストたちは自身を「ハウス・オブ・フィールド」と名乗り結束。有名も無名も関係なく、皆が愛を込めてさまざまな作品をフィールドへ提供し、ダウンタウン内で移転を繰り返しながら、いつも全体がアート作品に覆われていました。2016年、ブティック「パトリシア・フィールド」は世界中のファッショニスタたちに惜しまれながら閉店。約半世紀に及ぶ歴史の幕を閉じました。

そしてダウンタウン・カルチャーの美学を飾ったといっても過言ではない作品群は「パトリシア・フィールド アートコレクション」として中村キース・ヘリング美術館へ収蔵されました。私も2014年まで、そのハウス・オブ・フィールドの一員としてフィールドの下で働いていました。そして私が日本で働くことになるきっかけである中村和男氏(シミックグループCEO/中村キース・ヘリング美術館館長)との出会いも、彼女との交友関係によるものでした。

当館ではパトリシア・フィールドはもちろん、ハウス・オブ・フィールドの作家たちに焦点をあて、彼らの「伝説」に迫る展示をしています。さらに7月15日にはコレクションを紹介し、ハウス・オブ・フィールドの日本人メンバーを招いて制作したカタログ『パトリシア・フィールド アートコレクション「ハウス・オブ・フィールド』を刊行しました。アメリカでは知る人ぞ知る、そして美術館としては世界初の試みである「ハウス・オブ・フィールド」のレガシーを是非、体験してみてください。

ハウス・オブ・フィールド展

The House of Field | NKHC2023
https://www.2023exhibitions.nakamura-haring.com/ja/hof


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