今では世界の4人に1人が英語を話し、そのうち約8割は英語が母国語でない人と言われています。残り2割のネイティブスピーカーが話す英語にも、アメリカ英語、イギリス英語、カナダ英語、ニュージーランド英語、オーストラリア英語でそれぞれ特徴があり、同じアメリカ英語でも北部と南部ではサウンドが異なります。
私はカナダ(ブリティッシュコロンビア州)とアメリカに在住経験があり、アメリカは東海岸(マサチューセッツ州ボストン)、西海岸(カリフォルニア州モントレー)、南部(ノースキャロライナ州ダーラム、アラバマ州バーミンガム)にトータル10年ほど住みました。
また、通訳者になって四半世紀以上が経ちましたので、これまでさまざまな訛りに触れてきました。そうした経験から、今回は私たち通訳者も悩まされる訛りの強い英語について解説します。

1. インド訛り

製薬関連のデータセンターがインドとアイルランドに集中しているためか、ここ十数年でインド訛りやアイルランド訛りの 英語を通訳する機会が増えてきた印象があります。どちらも手ごわいですが、インド訛りに苦手意識を持つ通訳者は多いと思います。早口で、単語と単語の切れ目がわかりづらく、Rの発音は舌を巻き(garbageがガルべジのように聞こえる)、WをVのように発音する(waterがヴォータルのように聞こえる)のが特徴です。

2. シンガポール訛り

「シングリッシュ」と呼ばれるほど発音やイントネーション、言い回しが独特なシンガポール英語。主に中国語、マレー語、イギリス英語の影響を受けています。先日の監査では、dryingがdyingに、wasteがwetに聞こえました。また、car park はカッパッ、No needはノニッと聞こえます。

3. フランス訛り

フランスの英語も独特です。Hは発音しない、母音をフランス語、Rをふるえ音として発音するなどの特徴があります。私は駆け出しのころにフランス人宝石商の通訳をして多少耳が慣れているので、Hepatitis A( A型肝炎)をエパティティ・アと聞き取り慌てているパートナーに急いでメモを出した思い出があります。

4. 南部訛り(アメリカ)

南部訛りも独特です。アラバマ州に4年住み、聞き取りに少し自信がつきましたが、Y’al(l ヨーと発音し、皆さんという意味)という表現や、「drawl」と呼ばれる母音を伸ばすゆっくりした話し方が特徴です(penはピエン、tenはティエン、policeはポウリース、danceはデエアンスのように聞こえます)。南部の暖かい気候と温かい人々が懐かしいです。

5. ボストン訛り(アメリカ)

ボストン訛りも特徴的です。単語の最後のR(car、barなど)や、子音の前に来るR(heart、parkなど)を強く発音しないので、 ボストン訛りの強い人が “Park the car” と言うと「パク the カ」のように聞こえます。Fast-paceのボストンからslow-paceのアラバマ州に引っ越したときには、生活ペースの違いや人々の気質の違いに戸惑いましたが、住めば都ですね。ボストンもバーミンガムも大好きな街です。


英語が事実上の世界共通語になったと言われて久しく、英語を第二、第三言語として習得した人々と仕事をすることが増えてきました。お互いに母国語でない言語でコミュニケーションをとるには、言葉だけではなく図を描く、文字で示す、現物を見せる、シンプルな文法と単語でゆっくりクリアに説明をするなどの工夫が必要になります。独りよがりにまくし立てるのではなく、共通理解を目的とするコミュニケーションをすることをお互いに心がけたいものですね。さまざまな訛りに慣れていくことも、その一助になるでしょう。





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